スクラップ
欠けているのは、思想だ。韓国や台湾と違って日本は未だに、分かりやすい政治理念をもつ政党や、国の未来像を独自に描くことのできる政党を欠いている。あまたの派閥に分断された自民党も、今回勝利した民主党も(見事なほどバラバラな意見が混在する、5つの政党の寄せ集めだ)、思想的な一体性をもっているとは言いがたい。そして現場レベルで言えば、日本の選挙戦というのは「私に入れてください。よろしくお願いします」と頼んで回る以外の、なにものでもなく、そこに政治的な洗練はない。
こういう事態になっても尚、自分たちには選択肢が本当にあるのかどうか、有権者は確信できずにいる。世論調査を見ても、個々の日本人に話を聞いてみても、日本の有権者は民主党の政策に心から同調して投票したというよりも、自民党に対して反乱を起こしたのだ。しかしそれでも日本人は、自分たちが本当の意味で主権を行使した、あるいは影響力を発揮したのかどうか、確信できずにいる。その証拠に30日の夜、こんなことがあった。あるイタリアのテレビ・プロデューサーが「民主主義の歴史的勝利をあちこちで祝っている日本人の画像をとってこい」と、カメラマンを外に送り出したのだが、そんな光景はどこにもなかったのだという。「何も録画できなかったんだ」とこのプロデューサーは嘆いていた。
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